【梅毒検査の種類】
梅毒検査には、STS検査(Serologic Test for Syphilis)とTP検査(Treponema pallidum)の二種類があります。
不安な行為をして早く感染の判断をした時の検査の受け方を解説しみます。
検査の受け方を間違えば、正しい検査結果をえることは出来ません。
STS検査とTP検査の特性を正しく理解して検査を受ける必要があります。
1.STS検査(Serologic Test for Syphilis)
脂質抗原をプローブとして用いる抗体検査法がSTS法と総称されています。
用いられるプローブはカルジオリピン(cardiolipin)で、これは動物細胞のミトコンドリアに局在するジホスファチジルグリ セロール(diphosphatidylglycerol)です。
このプローブに反応する抗体は、トレポネーマ・パリーダムの感染により感染した体の組織が破壊されるのに伴い自己抗原が 認識されて産生された一種の自己抗体です。
この抗体を検出するために検査反応の安定性と再現性を高める意味でコレステロールとレシチンを混合した抗原がプローブに 使用されています。
自己抗体(レアギン)を検出することから、感染初期から陽性となります。
自己抗体を検出することから、トレポネーマ・パリーダムに対する特異性がないことからトレポネーマ・パリーダムに感染し ていなくてもその他の感染症、自己免疫疾患、 妊娠などにおいて生物学的偽陽性反応(BFP:biological false positive )を 呈することがよくあります。
2.TP検査(Treponema pallidum)
TPHA法(Treponema Pallidum Hemagglutination Test)は、トレポネーマ・パリーダムに特異的な抗体を測定する検査方法で、 トレポネーマ・パリーダム株より作成された抗原を用います。
ゼラチン粒子にTP抗原を感作して、血清中に産生されたTP特異抗体による架橋で生じるゼラチン粒子の凝集を判定します。
FTA-abs法(Fluorescent Treponemal Antibodyabsorption)は、検査を実施する前に非病原性トレポネーマ・Reiter 株で 血清中の非特異的な抗体(義陽性反応を引き起こす要素)を吸収した後に病原性のあるトレポネーマ・Nichols 株と反応させ、 間接蛍光抗体法で梅毒特異抗体を検出します。
梅毒を引き起こすトレポネーマ・パリーダムを抗原として利用することから、検査の特異性が高く生物学的偽陽性反応 (BFP:biological false positive )を呈することが非常に少ない。
STS検査に比べて感染後に陽性となる時期が遅れること、治療により体内からトレポネーマ・パリーダムが消失した後も 陽性状態(瘢痕陽性)が続くため、治療効果の 判定には使えません。
【梅毒検査の落とし穴】
STS検査は不安な行為から4週が経過した時点で受ければ信頼できる結果は得られます。
ただし梅毒に感染していなくても陽性(偽陽性)となる場合があります。
TP検査は不安な行為から5週以上経過した時点で受ければ信頼できる結果は得られます。
5週前に受けると梅毒に感染していても陰性(偽陰性)となる場合があります。
【梅毒トレポネーマの感染の判断を早くしたい場合】
梅毒トレポネーマの感染を早く知りたい場合は、IgM-FTA-abs検査を受けることです。
IgM-FTA-abs検査はIgM型のTP抗体を検出するための検査法です。
梅毒に感染した初期には、梅毒トレポネーマIgM抗体が先に出来て、その後IgG抗体が出来ます。
このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で体内にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ 信頼出来る結果が得られます。
そのことからして、早く感染の診断を下したい時に利用される検査法です。
【注意】通常のFTA-absはIgG型のTP抗体を検出する検査法ですのて、感染後1週間で検査を受けても正しい結果は得られません。
【梅毒トレポネーマ感染後早く陽性となる検査法の順番】
1.IgM-FTA-abs検査
感染後1週間
2.FTA-abs検査
感染後3週間
3.STS検査(RPR検査)
感染後4週間
4.TPHA検査
感染後5~6週間
【保健所での迅速梅毒検査の落とし穴】
最近梅毒迅速抗体検査を利用して、即日に検査結果がわかると保健所等では言っていますが、梅毒迅速抗体検査は TP抗原を利用したイムノクロマト法ですから、梅毒の早期検査には適していません。
梅毒トレポネーマに感染後5~6週間経過して受けずにこれ以前に受けると、感染していても陰性となってしまいます。
以上をよくお読みになって正しく梅毒検査を受けて下さい。