2023年8月31日木曜日

クラミジア感染症について知ろう-3.クラミジアの血液検査は信頼性が低い??!!-

クラミジアの血液検査とは、通常、IgG抗体とIgA抗体という2種類のクラミジア抗体を検査します。

尿検査や性器や喉、肛門の粘膜検査では、感染してから2週間程度で検査ができますが、血液検査の場合は、4週以上経過しないと感染が分からないことが多いです。

また、クラミジアが完全に体の中からいなくなって治癒後にも、IgG抗体だけでなくIgA抗体も陽性となることから、現在感染しているのか、治癒後なのかが正確に判断できません。

実際、クラミジア抗体検査が陽性で、尿や粘膜からの検査を受け直した結果、現在クラミジアの感染はなく、過去に感染して治っていて、治療の必要のない事例が多く見られます。

血液でクラミジア抗体検査を受けても結局、通常の尿検査や粘膜検査を再度受け直す必要があることからして、クラミジアの血液検査を受けることはお勧めできません。

正確に感染判断をするには最初から尿検査や粘膜検査を受けることをお勧めします。

2023年8月24日木曜日

クラミジア感染症について知ろう-2.クラミジア感染症の検査について-

【検査】


1) クラミジア抗原の検出


現在クラミジアに感染しているかどうかがわかります。


2)即日検査


【男性】 採尿による検査


※クラミジアの感染がその日に判明することから、多くの施設で検査されていますが即日検査は精度が落ちることから、翌日~翌々日に結果報告が出るPCR検査等の検査を受けることをお勧めいたします※


【女性】


子宮口ぬぐい液や膣分泌液による検査。


3)血中クラミジア抗体(IgA、IgG検査)


男女とも血液で検査が可能ですが、以下のような欠点があります。


1.クラミジアが完全に体の中からいなくなって治癒後にも、IgG抗体だけでなくIgA抗体も陽性となることから、現在感染しているのか、治癒後なのかが正確に判断できません。


2.クラミジア抗体検査が陽性で、尿や粘膜からの検査を受け直した結果、現在クラミジアの感染はなく、過去に感染して治っていて、治療の必要のない事例が多く見られます。

3.血液でクラミジア抗体検査を受けても結局、通常の尿検査や粘膜検査を再度受け直す必要があることからして、クラミジアの血液検査を受けることはお勧めできません。


4.正確に感染判断をするには最初から尿検査や粘膜検査を受けることをお勧めします。


5)PCR検査


患部分泌物や尿およびうがい液検体中のクラミジア・トラコマチスを遺伝子診断法(リアルタイムPCR法)により迅速、高感度に検出する方法で極めて高感度で検出できます。


【治療】


男性でも女性でも、抗生剤の内服による治療となります。


(1) アジスロマイシン単回内服


(2) クラリスロマイシン・ミノサイクリン・ドキシサイクリンなどの7~14日間の内服


・有効率は90%前後となり100%ではないため、治癒したかどうかの確認検査が必要となります。


・服用中に飲酒をすると治癒率は下がります。


・内服中でも新しい交渉を持つと再感染する可能性があります。


・精巣上体炎や前立腺炎などの尿道以外の臓器にも感染が広がっている時は、(1)(2)を併用したりすることもあります。


【治癒の確認】


クラミジア抗原の検出によってクラミジア感染が診断された場合は、治療後にクラミジア抗原の消失を確認する必要があります。


治癒確認の抗原検査は薬剤投与後およそ3週間程度の間隔をおいて再検査し、クラミジア抗原が陰性となれば治癒判定とします。


【日本人の感染実態】


クラミジアは性行為感染症の中で最も多い感染症で、最近の報告では18~19歳の女性の10人に3人、20代では20人に3人が感染しているという統計調査があります。


風俗で働いている女性では、クラミジアの血清抗体が約9割陽性であったとの報告があり、さらに子宮頸管からクラミジアが60%程見つかったとの報告もありることから、風俗での感染拡大が指摘されています。


更に女性の感染者の5人に4人までが自覚症状がないことから、感染に気づくことがありません。


クラミジアは性器だけに感染するのではなく、咽頭に感染します、特に最近の性の多様化から、一般の若年者の性器や喉への感染が増加しています。


要するに一昔前までは性器感染がほとんどでしたが、近年の性行動が多様化し、男女とも咽頭への感染が増加してきているのもひとつの特徴です。



【感染予防】


コンドームなどの使用による性器粘膜の接触を伴わない行為や、お風呂場や空気感染などの間接的な感染はまずありません。


従ってコンドームの正しい使用で感染は防げます。


【HIV感染との関連性】


クラミジア感染により性器粘膜がただれることから、HIVへの感染率が通常の数十倍になるという統計もあるので、検査する際は併せてHIV検査もすることをお勧めします。

2023年8月22日火曜日

クラミジア感染症について知ろう-1.クラミジア感染症とは-

クラミジア・トラコマチス感染症は、クラミジア・トラコマチスが引き起こす性行為感染症のひとつです。


クラミジア・トラコマチスはトラコーマを引き起こす病原体で一昔前まではトラコーマを引き起こす眼感染症でしたが、現在では性行為感染症の病原体として知られています。


クラミジアは、性行為感染症の中で最も多い性行為感染症で、最近の報告では18歳から19歳の女性の10人に3人が、20代では20人に1人が感染しているという調査報告があります。


男性の場合は、感染している人のうち症状が出現したのは、約10%の方のみだったそうです。



更に世界中で感染が問題となっています。


【感染経路】


性交・オーラルセックス・キスなどにより粘膜に感染する。


【感染確率】


クラミジアは感染力が非常に強く、感染者との1回の性交渉で50%以上の感染するとの報告があります。


【感染場所】


感染部位は、男性は尿道、女性は膣内に感染し、咽頭や直腸には男女ともに感染する。


相手が咽頭感染している場合通常の口づけでは感染する可能性は低いが、ディープキスの場合は感染率が高くなる。


クラミジアの感染は、クラミジアが存在する場所に接触することによって感染しますので、性器に感染していても口中にクラミジアがいなければキスで感染することはありません。


【潜伏期間】


感染して1~3週間後に症状が現れる。


【症状】


1.男性


比較的サラッとした尿道分泌物や軽い排尿痛が出現します。


痛みや激しいかゆみなどの症状があれば病院を受診し治療が行われますが殆どの場合、全く無症状のない場合が多いことから感染に気付くことはまずありません。


尿道にクラミジア感染がある場合、咽頭からクラミジアが検出される割合は4~13%と報告されています。


2.女性


おりものが増える事がありますが、自覚症状が殆どないことからやはり感染に気付くことはまずありません。


感染機会後1~3週間後で、帯下が多少増加する子宮頸管炎を発症し、放置すると卵巣や卵管の周りに癒着を起こし、子宮付属器炎や骨盤腹膜炎を発症します。


この場合下腹部痛が見られることもありますが、女性でも無症候感染が半数以上で見られ、知らないうちに卵管周囲の癒着を起こし、将来の子宮外妊娠や不妊症の原因となることもあるので注意が必要です



喉頭感染では喉が痛くなり痰が増えたりしますが、やはり無症状のことが多く感染に気付くことはまずありません。


子宮頸管からクラミジアが見つかった場合、咽頭からクラミジアが検出される割合は10~25%と報告されています。


※海外では咽頭クラミジアの感染は、男女差は認められませんが、日本では女性の方が咽頭クラミジアの感染は多い傾向にあります※

 

2023年8月21日月曜日

梅毒について知ろう-14.梅毒バラ疹とは-

【梅毒バラ疹とはどのようなものなのですか?】


梅毒トレポネーマに感染し、治療をしないで3ケ月以上を経過すると、梅毒トレポネーマが血液によって全身に運ばれ、 手のひら、足の裏、体全体にうっすらと赤い発疹が出ることがあります。


バラ疹は斑丘疹状紅斑を呈して3~10mm程度の小さな紅斑を呈します。


色調としてはピンク・赤色・褐色など種々の色合いをしますが、しばしば落屑・膿疱・潰瘍などを起こすこともあります。


※落屑(らくせつ)とは、皮膚の表層が大小の角質片となってはげ落ちること※


しかし水疱となることは極めて稀です。


梅毒患者の50~80%に手握や足の裏にも発現します。


この発疹は小さなバラの花に似ていることから"バラ疹(ばらしん)"と呼ばれています。


【バラ疹はどれ位出ているのか】


バラ疹はたいてい数日から数週間で消えることからして、皮膚の変化以外には特に自覚症状がないため、 気づかない場合もあります。


バラ疹は治療をしなくても数週間以内に消え、再び再発を繰り返すこともあります。


バラ疹が消えると梅毒は治ったということです?


抗菌薬で治療しない限り、病原菌である梅毒トレポネーマは体内にいることから梅毒が治ったわけではありません。

梅毒トレポネーマは、依然として体内にいて体を蝕み続けてています。


【バラ疹の出現頻度】


バラ疹は、第2期梅毒患者の70%に認められ、梅毒患者全体の90%以上に認められる頻度の高い症状です。


【バラ疹に触れると梅毒トレポネーマに感染してしまうのですか?】


浸出液や膿などが出ていないバラに疹触れても梅毒トレポネーマに感染することはありません。


【バラ疹らしきものが体に出たときの対応】


梅毒トレポネーマに感染する危険性のある行為をしてしまったときには、迷わず梅毒の専門家である皮膚科医を受診 する必要があります。


梅毒バラ疹は、アレルギー、風しん、麻しん等に間違えられることもありますので、専門家である皮膚科医を受診する必要があります。

 

2023年8月19日土曜日

性行為感染症について

 【性行為感染症とは何ですか?】


性行為感染症(Sexually Transmitted Diseases:STD, Sexually Transmitted Infection:STI)は、性行為によって感染する病気の総称です。


性行為感染症は、膣性行為とディープキス・ペッティング・フェラチオ・クンニリングス・アナルセックス・道具を使った行為等 によって感染する全ての感染症を言います。


性行為の相手が、同性・異性の区別はありません。


【性行為感染症はどのようにして感染するのですか?】


本来は性行為によって感染する感染症を指しますが、近年の性の多様化により、性行為は膣性交にと止まらず、性行為に類似した行為(オーラルセックス)が行われています。 


たとえば、ファッションマッサージ・イメクラ・キャバレー・ホテトルなどが流行し、オーラルセックスなどのいわゆる 「お手軽セックス」が簡単で安価にできるようになり、それに伴い若者の世代に限らず、広い世代で性行為感染症が蔓延しています。


【性行為感染症の感染する場所はどこですか?】


性行為感染症の原因となる病原体は、体液(精液、膣液、血液など)の中に含まれ、おもに人体の粘膜(陰茎、膣、肛門、尿路)から感染します。


また、最近の性の多様化により、口腔・のど・気道へ感染することも多いのが現状です。

しかし、傷のない健康な皮膚からの感染のリスクは限りなく低いです。


【性行為感染症の世界の実情は?】


性の開放化が早期に起こった欧米先進諸国では、日本よりも早く性行為感染症の蔓延が問題化しましたが、欧米では感染予防に重点を置き 性教育を充実させ、小中学校時よりコンドームの重要性を重視して教育した結果、欧米の若者の多くは避妊というよりも感染症予防として コンドームを持っていることが当然のこととなっています。


このように性行為感染症に対する予防教育の充実により、欧米先進諸国では一般に性行為感染症は横這い、または減少傾向となっています。


反面、性の開放化が早期に進んでいた欧米では、元々が性行為感染症が多く流行しており、現在でもそれはあまり変化していないという現実もあります。


アメリカのテレビ番組では10代少女の4割がクラミジアに感染しているというショッキングなアンケート結果が公表されたこともありまた、疾病管理センターでも思春期の少女の4人に1人が少なくとも性行為感染症のひとつにかかっているとあるという調査結果を まとめています。


そのため、キリスト教系団体の中には、避妊行為をすること自体を教義に反すると考え、コンドームの使用を疑問視する動きもあります。


【性行為感染症の日本の実情は?】


日本での性行為感染症の現状は、欧米先進諸国と異なり、特にHIVに関しては1990年代以降に急増傾向にあります。


わが国で特に流行している性行為感染症は、淋病とクラジミアと梅毒です。


淋病は、大昔から存在する病気で、主に男性がかかりやすい病気で、欧米先進国ではすでに過去のものとなる傾向にありますが、日本だけでは近年、感染者が増加傾向にあります。


また、クラミジアは女性の感染者が増加しています。


更に梅毒は2015年から流行が始まり、2022年はここ10年来最高の10000人を超えて未だに大流行しています。


現在日本では、性行為感染者が600万人は存在しているとされています。


【性行為感染症にはどのようなものがあるのか】


日本性感染症学会、日本皮膚科学会などは独自に性行為感染症分類していますが、ここではこれらの学会資料に基づいて一般的な性行為感染症を列記しておきます。


梅毒

淋疾

軟性下疳

性病性リンパ肉芽腫

鼠径部肉芽腫

非淋菌性尿道炎  

性器ヘルペス

尖圭コンジローマ

性器伝染性軟属腫

疥癬

毛ジラミ症

膣トリコモナス症

ヒトパピローマウイルス感染症

赤痢アメーバ

A・B・C型肝炎

HIV感染症/AIDS

伝染性単核症

HTLV-1


これら感染症については当ブログにて順次紹介していきます。

2023年8月17日木曜日

梅毒について知ろう-13.扁平コンジローマとはどのようなもの-

【扁平コンジローマとは】


梅毒トレポネーマに感染後3ケ月が経過すると、第2期梅毒となり肛門周囲,外陰部,会陰部、乳房の下, 腋窩など皮膚ないし粘膜が互いに触れ合うところに生じるエンドウ豆くらいの大きさの扁平に隆起した柔らかい丘疹が出来ます。


名前のごとく扁平(へんぺい)に隆起したイボが湿っぽくなり分泌液を出す状態になり、 この皮疹を扁平コンジローマと言います。


この出来物である扁平コンジローマは浅い潰瘍を伴い、表面は湿っていて白色となってふやけた状態になります、 ここには梅毒スピロヘータが多量に存在これに接触することによりいとも簡単に感染を起こす危険な出来物です。


この出来物は、殆どは自覚症状はありませんが軽い痛みや痒みなどの不快感を伴うこともあります。


【尖圭コンジローマと扁平コンジローマは同じものなのか??】


尖圭(せんけい)コンジローマはヒトパピローマウィルスによって引き起こされ名前が似ていますが、扁平コンジローマとは全く異なる別の病気です。


【扁平コンジローマは梅毒に特徴的な症状!!】


梅毒トレポネーマに感染して出現する皮疹の中でも、扁平コンジローマは梅毒に特徴的ですから、 扁平コンジローマの様な疑わしい皮疹が出た場合は直ぐに皮膚科を受診して下さい。


梅毒トレポネーマに感染してから3ケ月が経過すると第2期になりますが,この症期の初めには梅毒性バラ疹が出現し, ついで丘疹性梅毒疹が発生しますが、扁平コンジローマはこの丘疹性梅毒疹の特異型です。

 


台風7号による被害のお見舞い

 このたびの台風7号により被災された方々に心からお見舞い申しあげます。


また復興にご尽力されている皆様には、心から感謝申し上げます。


早期の復旧をお祈り申し上げます。


HIV/AIDSを正しく認識しょう-18.HIV感染による初期症状について-

【いつ頃現れるのか】 HIVに感染してから通常2~6週以内に現れます。 【HIVに感染した人全てに現れるのか】 感染した人の約半数から2/3に、これらの症状が起こることがあります。  全ての感染者にこのような症状が現れるとは限りませんし、全く症状の現れない人もあります。 【初期症...