2023年9月15日金曜日

サル痘について-2.日本国内でのサル痘の現状-

日本国内では、2022年7月25日に国内1例目の患者が報告され、2023年に入って日本国内の感染者が急増し、2023年8月23日時での累計で195人となっています。


サル痘は2022年、欧米を中心に世界111ケ国に拡大し世界保健機関によると、2023年5月8日までに87377人以上が感染、130人が死亡しています。


2022年夏のピーク時には1週間当たり7000人超の感染が確認されていましたが、最近では100人前後で推移しています。


現在報告されている患者の大部分は男性ですが、小児や女性の感染も報告されています。

日本国内では2022年7月25日に初めて感染者を確認ご、昨年は計8人でしたが、2023年1月以降、海外渡航歴がない人の感染が増加し、8月15日時点で昨年からの累計は195人と増加しています。


感染経路は、飛沫感染と接触感染です。


サル痘患者の発疹や水疱、かさぶたに触れる、それらの病変部と接触した物や衣類、寝具に触れる、感染者の唾液や体液に触れる等の行為で感染する可能性があります。 


サル痘の潜伏期間は6~13日(最大5~21日)とされており、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などの症状が0~5日続き、発熱1~3日後に発疹が出現、発症から2~4週間で治癒するとされています。


発熱、発疹等、体調に異常がある場合には身近な医療機関に相談するとともに、手指消毒等の基本的な感染対策を行ってください。

 

2023年9月8日金曜日

サル痘について-1.サル痘とは-

世界保健機関(WHO)は2022年6月8日、天然痘に似た症状が出るウイルス性疾患「サル痘」の発生状況について、世界の30ケ国で、1000件を超える患者を確認したと報告しています。


ではサル痘とはどのような感染症なのでしょうか。


サル痘(モンキーポックス:monkey pox)は、サル痘ウイルス感染による急性発疹性疾患で、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによって引き起こされます。


実験動物として採集されたサルの一部が感染し発症していたことが最初の発見契機であったため、サル痘と呼ばれますが、本来のウイルス保有動物は土着のリスやネズミ(げっ歯類)などです。


もともと中央・西アフリカの熱帯雨林などで確認されていましたが、当初は欧米で広がりましたが現在は下火となりつつあります。


サル痘には、コンゴ民主共和国には強毒な「コンゴ盆地型」サル痘ウイルスが分布していますが、西アフリカには比較的弱毒の「西アフリカ型」サル痘ウイルスが分布します。


1.コンゴ盆地型は、強毒で致死率は1~1%で、人から人への感染が多く報告されています。


2.西アフリカ型は、比較で弱毒で致死率は低く、人から人への感染も認められています、現在流行しているのはこのタイプです。


3.西アフリカ型と遺伝子的に少し異なるウイルス】


2017年からナイジェリアで流行していて致死率は、0~3.3%です。


クレードⅡb(clade Ⅱb)と分類されています。


※現在非流行国でヒトからヒトへの感染によって流行しているサル痘は、ナイジェリアで流行しているclade Ⅱbのサル痘ウイルスで、比較的軽症例が多いですが免疫不全者は重症化します※


【潜伏期間と症状】


サル痘の潜伏期間は5~21日(通常7~14日)とされ、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などが1~5日続き、その後発疹が出現します。


発疹は典型的には顔面から始まり、やがて体幹部へと広がります。


※重症例では天然痘と臨床的に区別できず、サル痘に特徴的な所見としてはリンパ節腫脹が患者に共通に認められる※


症状は発熱と発疹を主体とし、多くは2~4週間で自然に回復しますが、小児等で重症化、死亡した症例の報告もあります。


【感染ルート】


サル痘ウイルスの動物からヒトへの感染経路は、感染動物に咬まれること、あるいは感染動物の血液・体液・皮膚病変(発疹部位)との接触による感染が確認されています。


自然界ではげっ歯類が宿主と考えられていますが、自然界におけるサイクルは現時点では不明です。


ヒトからヒトへの感染は稀ですが、濃厚接触者の感染や、リネン類を介した医療従事者の感染の報告があり、患者の飛沫・体液・皮膚病変(発疹部位)を介した飛沫感染や接触感染があると考えられています。


 【治療】


治療としては対症療法が行われます。


一部の抗ウイルス薬について、実験室レベルおよび動物実験での活性が証明されており、サル痘の治療に利用できる可能性があるとされています。


天然痘のワクチンである痘そうワクチンがサル痘予防にも有効ですが、日本では1976年以降、痘そうワクチンの接種は行われていません。


サル痘ウイルス曝露後4日以内に痘そうワクチンを接種すると感染予防効果が、曝露後4~14日で接種した場合は重症化予防効果があるとされています。


【参考サイト】


疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)


世界保健機関(WHO)


2023年9月5日火曜日

クラミジア感染症について知ろう-4.咽頭クラミジアについて(2)-

【咽頭クラミジア検査はいつ受けたらいいのですか?】


ディープキスやオーラルセックスを行い、数日後に喉に違和感があれば、直ぐに受診する必要があります。


しかし、現実は感染してもまず自覚症状がないことから、極端な話し、一度でもディープキスやオーラルセックスをした経験のある人ならクラミジアに 感染している可能性は〝ゼロ〟ではないことからして、知らず知らずの感染している可能性がないとも言い切れないので、 特に風俗店を利用したことがある、 不特定多数の異性とディープキスやオーラルセックスの経験のある人は、一度、しっかりと咽頭クラミジア検査を受けることを強くお勧めします。


咽頭クラミジアの治療法はどのようにするのですか?】


咽頭クラミジアの治療には、抗生物質やサルファ剤による内服治療が用いられます。


現在、クラミジア治療に有効とされる抗生物質は複数ありますが、近年、その手軽さと安全性、高い除菌率から、マクロライド系の抗生物質〝ジスロマック〟を処方する病院も 増加してきています。


咽頭クラミジアは性器クラミジアの治療に比べると治りにくい疾患であり治療期間も長引きやすいことから、治療の際には医師の指導・指示に従い、 自己判断で服用を止めることは絶対にしてはいけません。


【性器と咽頭へのクラミジア感染は別のもの?】


性器へクラミジアに感染した場合、パートナーへの感染予防のために、完治するまでは性行為は厳禁です。


「治療中でもフェラチオなら彼氏には感染させない」、「性器の検査でクラミジアに感染していなかったので、咽頭への感染はない」、「治療中でもクンニンリングスなら彼女には感染させない」 といった誤った認識から、パートナーに感染させている事例が多くあります。


性器への感染と咽頭への感染は別々に感染するということです、性器には感染していても、咽頭に感染していないこともありますし、咽頭に感染していても性器には 感染していないこともありますし、性器と咽頭の両方に感染していることもあります。


【咽頭クラミジアの現状は?】


海外では男女で感染差はありませんが、日本では女性のほうが咽頭クラミジアの感染者は多い傾向にあります。


この原因としては、オーラルセックスを主に行う風俗嬢の方が性行為を主にする風俗嬢に比べ咽頭感染率ははるかに高いことが疫学調査から明らかにされています。


更に風俗嬢だけでなく、オーラルセックスを複数の異性としている一般の女性や、ホモセクシャルな男性にも感染者が多く見られます。


性器からクラミジアが検出された男性の4~13%に咽頭クラミジア感染が認められています。


性器からクラミジアが検出された女性の10~26%に咽頭クラミジア感染が認められています。


【咽頭クラミジアはコンドームで感染予防は可能?】


咽頭への感染経路は、ディープキス・オーラルセックスなどによるため、性行為の際にコンドームを使用しても感染は防げません。


【咽頭クラミジア検査はパートナーと二人でなぜ受ける必要があるのですか?】


ディープキスやオーラルセックスでも感染する危険性が高いことから、必ずパートナーと一緒に検査を受けて下さい。


咽頭感染の殆どは無症状で、パートナーが自覚症状が無くても安心できません。


【咽頭クラミジアに感染しているとHIVに何故感染しやすいのですか?】


クラミジアに感染して咽頭粘膜がタダレていると、粘膜の防護バリアーが破壊されて、HIVの感染確率が数十倍と高くなりますので、注意が必要なのです。


【1回の性行為での感染率は?】


1回のオーラルセックスでの感染率は、50%以上と高いのが特徴です。


風俗で働いている女性数百人の調査結果から、咽頭クラミジアの感染率が7%あったとの報告もなされています。


【何科を受診すればいいのですか?】


男性、女性とも耳鼻咽喉科。


ただし、耳鼻咽頭科でも治療や検査を行っていない病院もあるので、受診前に電話などで予め確認されることをお勧めします。


2023年9月3日日曜日

クラミジア感染症について知ろう-4.咽頭クラミジアについて(1)-

咽頭クラミジアとは何ですか?


オーラルセックスなどにより、クラミジア・トラコマチスが咽頭に感染して炎症を起こすというものを言います。


咽頭クラミジアの感染する場所はどこですか?


咽頭に感染します。


感染するとどのような症状が出るのですか?


咽頭クラミジアの症状ははっきりしないのが特徴で、風邪の症状に似た症状が発症するので、風邪と間違える人もいるようです。


他にも、扁桃腺が腫れる扁桃腺炎がクラミジアによって発症して、咽頭クラミジアと同じく発症する例が増加してきています。


具体的には喉が腫れたりして熱が出たりするだけで、普通の風邪の症状と変わりがないのでなかなか気がつかない人も多いのが実情です。


咽頭炎を起こすことがありますが、いずれも、咽頭クラミジアとは気がつかずに、風邪だと思ってしまう人が多いようです。


咽頭クラミジアを治療しないとどうなるのですか?


男女ともクラミジアに感染しても何の症状も出ないことから、ディープキスやオーラルセックスで、配偶者・恋人等に感染させる危険性が高いことから、感染を放置してはいけません。


咽頭クラミジアの検査はどのような検査があるのですか?


1.喉の奥をスワブという綿棒で拭って検査する方法。


2.口腔内のウガイ液を検体とする方法。


両検査方法の検出率の差はほとんどかわりがありませんが、若干ウガイ液検査の方が検出率が良いという結果が得られていることから、 ウガイ液法によりる検査を行う施設が増えてきています。


続く

2023年8月31日木曜日

クラミジア感染症について知ろう-3.クラミジアの血液検査は信頼性が低い??!!-

クラミジアの血液検査とは、通常、IgG抗体とIgA抗体という2種類のクラミジア抗体を検査します。

尿検査や性器や喉、肛門の粘膜検査では、感染してから2週間程度で検査ができますが、血液検査の場合は、4週以上経過しないと感染が分からないことが多いです。

また、クラミジアが完全に体の中からいなくなって治癒後にも、IgG抗体だけでなくIgA抗体も陽性となることから、現在感染しているのか、治癒後なのかが正確に判断できません。

実際、クラミジア抗体検査が陽性で、尿や粘膜からの検査を受け直した結果、現在クラミジアの感染はなく、過去に感染して治っていて、治療の必要のない事例が多く見られます。

血液でクラミジア抗体検査を受けても結局、通常の尿検査や粘膜検査を再度受け直す必要があることからして、クラミジアの血液検査を受けることはお勧めできません。

正確に感染判断をするには最初から尿検査や粘膜検査を受けることをお勧めします。

2023年8月24日木曜日

クラミジア感染症について知ろう-2.クラミジア感染症の検査について-

【検査】


1) クラミジア抗原の検出


現在クラミジアに感染しているかどうかがわかります。


2)即日検査


【男性】 採尿による検査


※クラミジアの感染がその日に判明することから、多くの施設で検査されていますが即日検査は精度が落ちることから、翌日~翌々日に結果報告が出るPCR検査等の検査を受けることをお勧めいたします※


【女性】


子宮口ぬぐい液や膣分泌液による検査。


3)血中クラミジア抗体(IgA、IgG検査)


男女とも血液で検査が可能ですが、以下のような欠点があります。


1.クラミジアが完全に体の中からいなくなって治癒後にも、IgG抗体だけでなくIgA抗体も陽性となることから、現在感染しているのか、治癒後なのかが正確に判断できません。


2.クラミジア抗体検査が陽性で、尿や粘膜からの検査を受け直した結果、現在クラミジアの感染はなく、過去に感染して治っていて、治療の必要のない事例が多く見られます。

3.血液でクラミジア抗体検査を受けても結局、通常の尿検査や粘膜検査を再度受け直す必要があることからして、クラミジアの血液検査を受けることはお勧めできません。


4.正確に感染判断をするには最初から尿検査や粘膜検査を受けることをお勧めします。


5)PCR検査


患部分泌物や尿およびうがい液検体中のクラミジア・トラコマチスを遺伝子診断法(リアルタイムPCR法)により迅速、高感度に検出する方法で極めて高感度で検出できます。


【治療】


男性でも女性でも、抗生剤の内服による治療となります。


(1) アジスロマイシン単回内服


(2) クラリスロマイシン・ミノサイクリン・ドキシサイクリンなどの7~14日間の内服


・有効率は90%前後となり100%ではないため、治癒したかどうかの確認検査が必要となります。


・服用中に飲酒をすると治癒率は下がります。


・内服中でも新しい交渉を持つと再感染する可能性があります。


・精巣上体炎や前立腺炎などの尿道以外の臓器にも感染が広がっている時は、(1)(2)を併用したりすることもあります。


【治癒の確認】


クラミジア抗原の検出によってクラミジア感染が診断された場合は、治療後にクラミジア抗原の消失を確認する必要があります。


治癒確認の抗原検査は薬剤投与後およそ3週間程度の間隔をおいて再検査し、クラミジア抗原が陰性となれば治癒判定とします。


【日本人の感染実態】


クラミジアは性行為感染症の中で最も多い感染症で、最近の報告では18~19歳の女性の10人に3人、20代では20人に3人が感染しているという統計調査があります。


風俗で働いている女性では、クラミジアの血清抗体が約9割陽性であったとの報告があり、さらに子宮頸管からクラミジアが60%程見つかったとの報告もありることから、風俗での感染拡大が指摘されています。


更に女性の感染者の5人に4人までが自覚症状がないことから、感染に気づくことがありません。


クラミジアは性器だけに感染するのではなく、咽頭に感染します、特に最近の性の多様化から、一般の若年者の性器や喉への感染が増加しています。


要するに一昔前までは性器感染がほとんどでしたが、近年の性行動が多様化し、男女とも咽頭への感染が増加してきているのもひとつの特徴です。



【感染予防】


コンドームなどの使用による性器粘膜の接触を伴わない行為や、お風呂場や空気感染などの間接的な感染はまずありません。


従ってコンドームの正しい使用で感染は防げます。


【HIV感染との関連性】


クラミジア感染により性器粘膜がただれることから、HIVへの感染率が通常の数十倍になるという統計もあるので、検査する際は併せてHIV検査もすることをお勧めします。

2023年8月22日火曜日

クラミジア感染症について知ろう-1.クラミジア感染症とは-

クラミジア・トラコマチス感染症は、クラミジア・トラコマチスが引き起こす性行為感染症のひとつです。


クラミジア・トラコマチスはトラコーマを引き起こす病原体で一昔前まではトラコーマを引き起こす眼感染症でしたが、現在では性行為感染症の病原体として知られています。


クラミジアは、性行為感染症の中で最も多い性行為感染症で、最近の報告では18歳から19歳の女性の10人に3人が、20代では20人に1人が感染しているという調査報告があります。


男性の場合は、感染している人のうち症状が出現したのは、約10%の方のみだったそうです。



更に世界中で感染が問題となっています。


【感染経路】


性交・オーラルセックス・キスなどにより粘膜に感染する。


【感染確率】


クラミジアは感染力が非常に強く、感染者との1回の性交渉で50%以上の感染するとの報告があります。


【感染場所】


感染部位は、男性は尿道、女性は膣内に感染し、咽頭や直腸には男女ともに感染する。


相手が咽頭感染している場合通常の口づけでは感染する可能性は低いが、ディープキスの場合は感染率が高くなる。


クラミジアの感染は、クラミジアが存在する場所に接触することによって感染しますので、性器に感染していても口中にクラミジアがいなければキスで感染することはありません。


【潜伏期間】


感染して1~3週間後に症状が現れる。


【症状】


1.男性


比較的サラッとした尿道分泌物や軽い排尿痛が出現します。


痛みや激しいかゆみなどの症状があれば病院を受診し治療が行われますが殆どの場合、全く無症状のない場合が多いことから感染に気付くことはまずありません。


尿道にクラミジア感染がある場合、咽頭からクラミジアが検出される割合は4~13%と報告されています。


2.女性


おりものが増える事がありますが、自覚症状が殆どないことからやはり感染に気付くことはまずありません。


感染機会後1~3週間後で、帯下が多少増加する子宮頸管炎を発症し、放置すると卵巣や卵管の周りに癒着を起こし、子宮付属器炎や骨盤腹膜炎を発症します。


この場合下腹部痛が見られることもありますが、女性でも無症候感染が半数以上で見られ、知らないうちに卵管周囲の癒着を起こし、将来の子宮外妊娠や不妊症の原因となることもあるので注意が必要です



喉頭感染では喉が痛くなり痰が増えたりしますが、やはり無症状のことが多く感染に気付くことはまずありません。


子宮頸管からクラミジアが見つかった場合、咽頭からクラミジアが検出される割合は10~25%と報告されています。


※海外では咽頭クラミジアの感染は、男女差は認められませんが、日本では女性の方が咽頭クラミジアの感染は多い傾向にあります※

 

HIV/AIDSを正しく認識しょう-18.HIV感染による初期症状について-

【いつ頃現れるのか】 HIVに感染してから通常2~6週以内に現れます。 【HIVに感染した人全てに現れるのか】 感染した人の約半数から2/3に、これらの症状が起こることがあります。  全ての感染者にこのような症状が現れるとは限りませんし、全く症状の現れない人もあります。 【初期症...