2023年8月8日火曜日

梅毒について知ろう-8.梅毒トレポネーマに感染した場合の症状-

梅毒トレポネーマに感染してからの症状の経過を順序立てて紹介します。


【1.第1期梅毒】


梅毒トレポネーマに感染するとおよそ3週間後に、感染した部位に初期硬結・硬性下疳が出来るが、一般的に痛みなどはなく 無症候状態で経過します。


陰部に病変があるときには、鼠径リンパ節が左右対称に腫れますが痛みはありません。


これらの症状は治療をしなくても自然に消滅しますが、体内には梅毒トレポネーマが存在し、第三者に感染させてしまいます。


この時期が特に感染力が強いことから、梅毒の流行阻止には第1期梅毒の症状が現れた時に治療を開始することが重要とされています。


【2.第2期梅毒】


第1期梅毒の症状が出た後の4~10週後に発熱や皮疹が出現します。


皮疹は第2期梅毒の70%に認められ、梅毒患者全体の90%以上に認められる代表的なものです。


皮疹は3~10mm程度の斑丘疹状紅斑を呈し、色はピンク・褐色・赤色で全身に発生します。


その他粘膜疹や扁平コンジロームも出来てきます。


扁平コンジロームは、外陰部や肛門などの粘膜や皮膚が接触する部分に好発し、ダイズ大の扁平隆起性の腫瘤で表面から浸出液が出る ことが多く、この浸出液に多量の梅毒トレポネーマが含まれていることからこれに接触することにより簡単に感染してしまいます。


口の中には両側の軟口蓋に沿って広がる乳白色の粘膜斑が出来ます。


この粘膜斑はちょうど蝶が羽を広げているのに似ていることからも"バタフライ・アピアランス(butterfly appearance)"と呼ばれます。


またこの時期には全身のリンパ節が腫れますが、特に上腕骨の滑車上リンパ節の腫れは梅毒の特徴的な腫れです。


その他の症状としては、微熱・倦怠感・咽頭炎・食欲不振・体重減少・筋肉痛・関節痛などがあります。


この時期の血液検査では、感染者の半数以上に肝機能障害が現れ、アルカリホスファターゼが高値になりますが、血清ビリルビン値は 上昇しないという特徴的な検査所見を呈します。


また、一部の患者には胃に浸潤性または潰瘍性病変を引き起こすことから、しばしば悪性リンパ腫と間違われることがあります。


肛門性交を行う人は直腸にも病変が見られます。


結膜炎・角膜炎・虹彩毛様体炎・網膜炎・視神経炎を発症することがありますが、これを放置すれば失明する危険性があります。


【3.潜伏梅毒】


梅毒血清反応が陽性で、梅毒特有の臨床的症状が認められないものを潜伏梅毒と言います。


梅毒トレポネーマ感染後1年以内の潜伏梅毒はおよそ25%の患者で見られ、第2期梅毒の再発を起こすことから、 "早期潜伏梅毒"と言います。


それ以降の梅毒を"後期潜伏梅毒"と言います。


これは第1期及び第2期梅毒の時点で適切な治療を行わなかった場合、3分の2以上の患者が潜伏梅毒に移行します。


潜伏梅毒に移行した患者の25%前後が4年以内(多くは1年以内)に第2期梅毒の症状が再燃します。


潜伏梅毒になった患者のおよそ3分の1が晩期梅毒に移行してしまいます。


後期第3期(または晩期)潜伏梅毒は、性行為で相手に感染させることは殆どありませんが、胎児に先天性梅毒を引き起こす リスクはあります。


【4.第3期(または晩期)梅毒】


第3期(または晩期)は、適切な治療を行わなかった患者が感染時点から5~30年をかけて徐々に進行し 臓器の破壊性病変を引き起こしたものを言います。


治療を受けていない人の約3分の1に発生し、症状は軽いものから極めて重篤なものまで様々です。


神経梅毒・心血管梅毒・ゴム腫梅毒に分類されます。


現代の医療の発展により第3期(または晩期)の症例は極めて稀となっています。


※この時期は第三者に梅毒トレポネーマを感染させることはありません※


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