梅毒について詳しく解説していきますので、これを参考に正しい予防に心がけてください。
初回は日本における梅毒の現状を解説します。
2023年7月16日時点での梅毒患者が8040人に達しました。
この結果からして200~100人に1人が梅毒患者ということになります。
このままの状態で行くと2022年の12964人を抜き過去最高となる可能性が高くなってきました。
2023年の患者を都道府県別でみると都市部で多い傾向が見られます。
患者全体の約80%を占める男性は各年齢層から偏り少なく報告されていますが、女性は20代が女性全体の50%超を占め患者増加が際立っています。
最近の梅毒は男性の同性間の性的接触による感染だけでなく、異性間での感染も広がり、患者増加傾向が見られますが、この増加の原因は突き止められていません。
特に妊婦が梅毒トレポネーマ感染すると死産・流産のほか、胎盤を通して赤ちゃんが感染し先天性梅毒となります。
これを防ぐには妊婦健診を必ず受けることです。
異性間性交による梅毒患者増加は、その裏にHIV感染者の増加が考えられます。
梅毒トレポネーマにに感染すれば、HIVの感染リスクが極めて高くなりますので、不安な行為をした場合には必ず梅毒検査を受けることです。
梅毒はコンドームでは完全に予防できませんし、オーラルセックスでも感染することを認識しておく必要があります。
【梅毒トレポネーマの感染について】
梅毒トレポネーマが、コンドーム無しの性行為により感染する性行為感染症のひとつですが、 オーラルセックスなどで皮膚や粘膜の傷に接触することで感染します。
梅毒トレポネーマは、らせん状の形態をしたグラム陰性の真正細菌のひとのグループに属します。
梅毒トレポネーマは、高温、低温、乾燥にも弱く簡単に死滅し、石鹸水などでも簡単に死滅することが知られています。
【梅毒トレポネーマの感染する場所とは】
膣性交・肛門性交・オーラルセックスにより感染しますが、皮膚や粘膜の微細な傷口からも感染します。
最近では喉への感染事例が多く報告されています。
【梅毒トレポネーマに感染するとどうなるのか】
潜伏期間は、一般的に3週間前後です。
梅毒トレポネーマに感染している人とのオーラセックスと性行為の機会があってから約3週前後に、梅毒トレポネーマの侵入した場所に大豆くらいの大きさの硬いしこりが出来ます。
症状としては、以下のように分類されます。
【第1期梅毒】
梅毒トレポネーマの侵入した場所に大豆くらいの大きさの硬いしこり、"初期硬結"が出来ます。
初期硬結は、梅毒感染の最初の症状ですが痛みもかゆみもありません。
男性では、ペニスの先や包皮の内側に、女性では、大小陰唇や腟の入り口にできます。
また、口唇や手指及び乳首など陰部以外にできることもあり、これを"陰部外下疳"と呼びます。
"陰部外下疳"の発生頻度は3%前後と低いです。
一般的に初期硬結の数は1個がですが、2個以上できることもあります。
この時期の初期硬結は、表面の皮膚が破れて潰瘍化した硬性下疳に変化しやすい状態となっており、 このただれた面には梅毒トレポネーマが多数存在し、触れた人に感染します。
※硬性下疳は痛みがありません、亀頭部や冠状溝に激しい痛みのある潰瘍ができるものは梅毒ではなく軟性下疳という性行為感染症です※
当然性行為やオーラルセックスにより、表面の皮膚が破れて潰瘍化した硬性下疳に口・性器などが接触すればそこから梅毒トレポネーマは意図も簡単に侵入して感染します。
現在では、感染機会から1~2週後という比較的早い時期に発症するものが増加しています。
やがて、鼠径部のリンパ節が大きく腫れてきますが、痛みは全くありません、これを無痛性横痃(むつうせいおうげん)と呼びます。
いずれの症状も2~3週間以内に自然に消失してしまいます。
以上の病変は、治療をしなくても数週間以内に自然に治り、第2潜伏期に入りますが、この間に梅毒トレポネーマは血流にのって全身に広がります。
【第2期梅毒】
梅毒に感染して3ケ月から3年以内に体内に侵入した梅毒トレポネーマは、増殖しながら血管やリンパ管を通過して全身に広がり、皮膚や粘膜にいろいろの症状を引き起こし始めます。
そして最初に出現するのは、皮疹と呼ばれる"梅毒性バラ疹"です。
このバラ疹は、丁度爪くらいの大きさで、暗赤色または淡紅色の斑点で、特に上半身の皮膚に多く出現し、 丁度赤いバラの花びらのような発疹が手足の裏から出てきて、全身に広がり、最終的には顔にも広がりますが、このバラ疹は、かゆみも痛みもないのが特徴です。
※手のひらや足の裏まで出ていれば、まず"梅毒性バラ疹"と判断して間違いはありません※
かゆみや痛みの自覚症状もなく、数週で自然消退するため梅毒トレポネーマの感染は見過ごされることも多い訳です。
梅毒性バラ疹は、治療しなくても数ケ月で自然消失します、その為に梅毒は治ったと勘違いしますが、治療を受けない限り絶対に自然に治ることはありません。
バラ疹が消失後、次に出てくる皮疹は"丘疹性梅毒疹"です、"丘疹性梅毒疹"は、梅毒に感染してから、およそ4~6カ月ごろに出現してきます。
"丘疹性梅毒疹"の大きさは大豆から爪くらいで、皮膚面より盛り上がった硬い皮疹で、左右対称に出現します。
出現当初は赤色をしていますが、日が経つと共に、茶色をおびた赤い隆起となり、上半身の皮膚に多く出現しますが、顔面にも出現します。
この時期、皮膚から盛り上がった"丘疹性梅毒疹"が出たり、膿を持った『梅毒性膿疱』が出たりし、これらどちらかの発疹が3~6か月の間隔で出現をくり返します。
又、手のひらや足の裏に"丘疹性梅毒疹"が出現しますと、丘疹の表面の角質が厚くなり、乾癬症状によく似ていることから、『梅毒性乾癬』と呼ばれます。
手のひらや足の裏に丘疹の表面の角質が厚くなり、乾癬症状によく似ているものが出来れば、梅毒感染が強く疑われます。
この時期は、当然梅毒血清反応は強陽性となります。
【第3期梅毒】
感染後3~10年の状態で、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生しますが、現在ではこのような症例をみることは稀です。
この時期は血液検査でのみでしか梅毒感染の判断は出来ません。
【第4梅毒】
感染後10年以降の状態で、多くの臓器に腫瘍が発生したり、脳、脊髄、神経を侵され麻痺性痴呆、脊髄瘻を起こし、死亡に至ることがありますが現在ではまずありえません。
【扁平コンジロームとはどのようなものなのか】
"丘疹性梅毒疹"が、外陰部や肛門付近のように皮膚や粘膜が向き合っている様な湿り気のある場所に出来ると丘疹は牛乳のような白い色となり、表面がただれて分泌物がにじみ出てきますが、 これを"扁平コンジローム"といいます。
この扁平コンジロームの中に、大量の梅毒トレポネーマが含まれていて、性的接触や皮膚に触れると簡単に梅毒にいとも簡単に感染してしまいます。
※扁平コンジロームのある感染者とコンドーム無しの性行為をすれば、いとも簡単に梅毒に感染してしまいますし、コンドームを使用していても、 コンドームで保護されていないペニスの根本などが扁平コンジロームに接触しても梅毒に感染してしまいます、要するに梅毒トレポネーマはコンドーム使用で完全に感染予防することは不可能 なのです※
更にこの時期喉に梅毒トレポネーマの感染があると、口腔粘膜に乳白色の斑点が生じる乳白斑や扁桃が赤く腫れる"梅毒性扁桃炎"が出現します。
口の中の粘膜の粘膜に大豆ほどの大きさの乳白色のやや固めの乳白斑ができたり、扁桃付近に潰瘍(梅毒性アンギーナ)ができたりしますが、 口の中に梅毒性扁桃炎や梅毒性アンギーナのある人にフェラチオやクンニンリングスをされたり、ディープキスをすると梅毒にいとも簡単に感染してしまいます。
【梅毒の怖い所以】
梅毒トレポネーマに感染しても抗生物質の適切な使用によって完治しますが、性器に梅毒トレポネーマ 感染があれば、梅毒トレポネーマによって引き起こされた性器粘膜のタダレにより、感染症に対する感染予防バリアが破壊されていることから、 この部分からのHIV感染の感染リスクは数百倍高くなることです。
現に梅毒患者を診ればHIV感染を疑えとまで言われています。